農業書センターに行く

先月、農山漁村文化協会(農文協)の直営店である、農業書センターを訪ねました。
場所は東京都の神保町駅出てすぐのところにあります。
私がこの書店を知るきっかけとなったのが、猪瀬浩平著『むらと原発 窪川原発計画をもみ消した四万十の人びと』に纏わる告知をSNSで知ったことのあたりにあります。

農業書センターは、農業の専門書が豊富です。『現代農業』『季刊地域』『うかたま』は、私が暮らしている北関東の大きい書店でも小さい書店でもよく見かけます。これら雑誌の面白く、魅力的なところは、農山村・漁村の暮らしている人々の、農山村・漁村ならではの課題とその解決の仕方や、郷土食などを、時に溌剌と、時に魅力的に扱っているところです。これらの雑誌の文体や紙面の主だったところから感じられたのは、土や水から離れた言葉で語り、そんなところから見ようとした農山村・漁村の課題ではありませんでした。そこがとても大事だと思っています。なぜならば、私自身が、田舎に暮らしながらも、都市生活の頭で編まれた文言に身を委ねてしまうことが出来てしまうからです。

まず、階段を上がると、内山節氏や宮本常一といった本が多数並ぶコーナーが現れます。ここのコーナーに、農山漁村文化協会の骨となるものがあるように思います。奥へ行くと、農山村・漁村の人々発の、暮らしに纏わる本が、農文協の出版物以外にも多数そろっています。

宮本常一のコーナー

宮本常一のコーナー

都市生活ではさほど起こりえない課題、例えば、獣害と呼ばれるような、猪や小型げっ歯類などによる農作物被害の対策に纏わるDVD付きの実践書が紹介されていました。

『これなら獲れる!ワナのしくみと仕掛け方』

『これなら獲れる!ワナのしくみと仕掛け方』

『これなら獲れる!ワナのしくみと仕掛け方』という本に付いたDVDの中では、ある農家の男性が、モグラを捕獲する罠にまつわる日記を日々つけていることが紹介されました。この画像を写真に収めて掲載したのは、都市の営みの中ではそうそう生まれ得なそうな体験について感じたからでした。

共同組合コーナー(以下、本の写真はクリックすると大きく見ることができます)

協同組合コーナー(以下、本の写真はクリックすると大きく見ることができます)

協同組合のコーナー。自然エネルギー発電の割合が高い家庭用電力事業に取り組んでいる協同組合があることを知ったので、最近協同組合に関心があります。実はこれを書いているときも、コープの人が営業訪問にやってきました。一人暮らしや年配の方にとっては、セーフティネットになり得るかもしれませんね。私も歳をとったら協同組合の人に肉や卵を配達してもらうかもしれないなあ、なんて思う事があります。

女性起業コーナー

女性起業コーナー

女性起業のコーナー。農山村・漁村は女性が居なければ決して発展しないでしょう。個人的には、「お嫁さん」という肩書で、女性が農山村・漁村を生きる時代は、だんだん古くなって、女性にも技と決定権と責任に纏わる部分が譲られて行って、必ずしも家庭や家内に拘らない農山村・漁村の発展が叶ってほしいと思っています。

アジアコーナー

アジアコーナー

アジアのコーナーです。最近は、農業の実習生として日本にやってくるアジアの国々の人たちが増えてきたように感じます。私も、中国の実習生の女性たちと農業をしたことがあります。彼女たちは仕事が早くて農業が上手でした。彼女らの地域の農業と日本の農業では、何か違う部分があるのか気になります。

民俗誌など

民俗誌など

民俗誌をはじめ、農山村全般に纏わるコーナーです。先日、北関東のある山村の農民たちが大勢殺されたと言われている、かつての事件に関わる地を訪ねました。実際に土地に足を運び、さらに補足的に書物に書かれたことを参考にしながら、かつてのむらの様相を想像するのは刺激的です。

狩猟の特集コーナー

狩猟の特集コーナー

こんなにたくさんの狩猟の本が並べられています。

海のコーナー

海のコーナー

海や漁のコーナー。実は、私は海の暮らしや海洋に纏わることが好きなので海のコーナーがあるのは嬉しいです!

『WELTGEIST FUKUSHIMA』と、福島や原発、地方自治などの集まるコーナー。

『WELTGEIST FUKUSHIMA』と、福島や原発、地方自治などの集まるコーナー。

レジの前に陳列されているのが『WELTGEIST FUKUSHIMA』です。この冊子は、福島や原発、放射能汚染、地方自治やむらのあり方に纏わる本が集まったところにあります。原発の建設や事故の被害は、農山村・漁村の人々を巻き込む形で起こってきました。雇用を生む、経済が潤う、というような、「背に腹は代えられぬ」なか、農山村・漁村の課題の解決が願われる体(てい)で原子力発電所は建てられて来たと私は考えます。かつての暮らしが、大きく様変わりするような取り引きのたびに、むら・親族・人は揉め、心模様は複雑になり、分断も起こりがちなことが世に知られて欲しいです。私の祖父は福島第一原発の足場を作った人夫だったと母に聞きました。親戚や知人にも原発関連の仕事をしていた人がいます。2000年代の相双地区のハローワークの「原発関連求人」のファイルに綴られている仕事の賃金は、その他の仕事のファイルより高かったことは、今思うと私たちが取引のコマであるかのような、露骨さをあらわしていたとも思えてきます。もはや私は土地の話し方も分からなくなるでしょうし、語らなくなる、というより、語り方が分からなくなることが、この先も増えていくでしょう。この本屋さんには、そんな、語る場がなかったことを語ろうとするような声が沢山あるような気がします。

農業書センターは、都市にいながらにして、農山村・漁村、そしてかつての人間の暮らしと通ずることが出来るような場所です。こんなお店が、地方都市や農山村・漁村にもあったら、面白そうだなあと思います。農業書は言葉に纏められたことではありますが、それを手に取る土地の人たちと、その地に新しく入ってきた人が、必ずしも言葉だけに依らないような実践も通じて出遭うきっかけとしての、本の場が各地に興ったら面白いんじゃないかなあと妄想しました。

最後に、『ドブロクをつくろう』。撮影は吉田葉月でした。

最後に、『ドブロクをつくろう』。撮影は吉田葉月でした。

SNSで新着情報が分かります。

田舎の本屋さん ツイッター

農文協・農業書センターフェイスブック