双葉町ドキュメンタリー「原発の町を追われて」を見る    伊藤 千惠

去る8月6日に開催されたドキュメンタリー映画「原発の町を追われて」を見た。
2012年に作られた1作目から、その後を追ったパート2、ある牛飼いの記録としてパート3と続けて見ると、原発事故のもたらしたものが避難という物理的困難さだけではなく、当事者である避難者を受け入れる側、あるい避難者ではない福島の人々の心境など、さまざまな方向に波及していることが見てとれる。
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、テキスト双葉町は2011年3月11日、東日本大震災による原発事故のさい、町ごと埼玉県に避難した。さいたま市在住の堀切さとみさんは、その当初から町民の方々と交流しずっと映画に撮り続けてきた。
最後の避難所としてマスコミにとりあげられ注目された騎西高校が閉鎖され、報道も少なくなった。いっときの流行ではなく、ずっと記録し続けてと町民の方から言われたそうだ。

今でも避難生活が続いているのは、双葉町も浪江町も大熊町も飯舘村も葛尾村も南相馬市も田村市も川俣町も広野町も楢葉町も富岡町も川内村も、すべての帰還困難区域にいる人たち、自主避難した人たちにとっても同じ。
映画では、双葉町民の受難がさまざまな立場から語られている。そこから発生する地域内での、あるいは県内での分断。是非の判断が簡単にはできない複雑にねじれた状況がある。
そこには、ひとりひとりのナマの物語がある。

福島第一原子力発電所から送電された電気を使ってきた東京都民の自分は、目を背けることはできない。
ひとりひとりの想いを聞いていきたいと思う。

「聴くメンタリー」を体験してきた

2月13日金曜日(!) 、新宿のCafe Live Wireで行われた 「ワカキコースケのレコード墓場~みんなで聴こう!昭和のドキュメンタリー~」というイベントに行ってまいりました。

主催者の若木康輔さんは、映画ライター、ドキュメンタリーカルチャーマガジン『neoneo』の編集委員さんです。(http://webneo.org/
まったくの予備知識なしで出かけたので、イベントの紹介文から主旨をコピペします。

―廃盤アナログレコードの「その他」ジャンルからドキュメンタリーを掘り起こしてジワジワ話題のneoneo web連載コラム『DIG!聴くメンタリー』が初のイベント化です!
13日の金曜日に、昭和の歴史的瞬間の音源、あの偉人の声etc.がレコード墓場から甦る!―

メディアがアナログレコードですので、ドキュメンタリーを見るのではなく「聴くメンタリー」なわけですね。
どんなものが登場したかというと、
「小林旭と美空ひばりの挙式前対談」、「小津安二郎の肉声」、「横井庄一さん日本帰還ドキュメント」、「ジョニー・キャッシュの肉声」、「アポロ11号、月からのメッセージ」、「梵鐘」、「パトカーの音」と「ランボルギーニ・カウンタックの音」を比較する、「長島茂雄引退セレモニー」などなど

昭和どっぷり青春時代の私には、ほとんどリアルタイムでの記憶があり、アポロの月着陸や横井さんのインタビュー、ジョニー・キャッシュ(刑事コロンボに出ていた!)など、とても感懐があったのですが、いちばん面白かったのは若木さんのおしゃべり。

コンセプトが記録としてのアナログレコードを聴くというものですから、ジャンル制限なし、とんでもなくディープなところから拾うこともできましょう。が、当時の王道を行く大スターや歴史的なできごとが、時間がたち風化していくことに愛惜の念を感じるという若木さんがいいなあ、と勝手に思ったのでした。

全国32箇所のお寺にある梵鐘の音を録音したレコードがまたよかった。
若木さんがひとつひとつ鐘の音を「カゥズオウーン」とか「ンゴオォォーン」とか聞き分けて表記したコピー用紙が配られ、実際にみんなで聴きながら、えーそんなふうに聞こえない!とかいうやりとりも楽しく。
(【連載】ワカキコースケのDIG!聴くメンタリー 第7回『梵鐘』 (http://webneo.org/archives/27390/2

ゲストとして作家の岡映里さんと短篇映画研究家・映画祭コーディネーターの清水浩之さんがいらして、とめどなく湧きでる若木さんのおしゃべりに句読点を打ったり、さらに細かく補充されたりと、お役目を的確に果たしておられました。

岡映里さんが昨年、出版された「境界の町で」は、震災後の福島に通い続けて書かれた本ですが、凡百のフクシマ本とは一線を画しています。(http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=888)
この日、別段かまえてお話されてはいませんでしたが、はしばしに鋭い分析力と繊細さを感じました。

私はドキュメンタリー方面には疎くて、なるほどドキュメンタリーってオールジャンルなんだなということを今さらながら認識しました。何だか社会的なもんだとばかり自分にバイアスをかけていたんでしょうね。
サブカルもアングラもマイナーもメジャーも垣根をはずして見ると世界が拡がります。