列島全体にフォールアウト。吉田邦吉


世界でおこなわれた核実験の影響による空気についてざっと学ぶことにした。なぜなら「日本全体の大気はどうなのか」と思ったからである。環境省のサイトでフォールアウトの件を検索してみると、北海道でセシウムが核実験の影響で見つかったということが分かった。それから東京都や日本全体でのことがグラフ化されていた。

そもそも核実験の世界初は1945年7月のアメリカである。そして左上のグラフは東京都の空からセシウム137が日々どれだけ降っていたかを示している。1950年代後半ぐらいから表示されており、1990年ぐらいまで相当にあるようである。しかも2010年代でも高い数値が記録されているようだ。朝日新聞によれば2019年2月にも核実験はアメリカで行われている。

右上のグラフは大気圏内核実験時代の国内の日常食中のセシウム137の量であるそうだ。そんなに昔からこの話はあったのか。わたしは何も知らなかったのである。大気圏内核実験というのは、地下とか水中とか大気圏外などでなく、地上、海上、空中のようである。

「大気圏内核実験は、1950年代から1960年代初頭にかけて米国、旧ソ連を中心に多数回実施された。実験は主として北半球の成層圏内で行われたため、核分裂生成物の微粒子は地球の大気循環流に乗って北半球全域に拡散、降水とともに地上にも降下し、地表面や農作物に放射性汚染をもたらした。降下核種の中ではセシウム137が最も多く、日本人成年男子を対象とした測定結果ではセシウム137平均体内量は1964年にピーク値(約530Bq)に達したが、米ソの大気圏内核実験の停止とともに急速に低下した。」ATOMICA (※平成31年3月14日より、ATOMICAは国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営)https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_510.html

ひょっとしたら日本中の日常食に微量でも入っているのかもしれない。同じ微量を福島という名前だけで避けようにもすでに日本中に人工由来の放射能があるということが現状のようだ。「低線量」という言葉の概念から比較したときにはやはり非常に微量な世界なのであろう。すなわち「微量の範囲の中に、日本全体がすっぽり入るので、日本全体が微量に汚染されている」と言える。むろん、わたし個人は福島に居るときと同じように微量の範囲内を心配しない。

下の2つのグラフは、日本人の成人男子の排泄尿中にセシウムが入っていて体内にもセシウムが入っていて、というグラフである。チェルノブイリ原発事故でも日本人の体内のセシウム量は増加したそうだ。なんと、こどものころのわたしたちのあの恐れは、恐れだけではなかった。すでに内部に取りこんでいた。ただし時間とともに排出されたようではある。

こういった数多くの核実験による放射性降下物をフォールアウトと呼ぶ。ちょっとした衝撃であった。ここで、フォールアウトなどという災害があると聞けば、人には人の精神的に受けるその苦痛というようなことが重い人がいる可能性を思う

たとえば現在のところデリーでは大気汚染が深刻であり計測できない状態にまでなって危機だそうだ(インド・デリー大気汚染、「耐えられないレベル」 外出自粛求める BBC 2019年11月4日 https://www.bbc.com/japanese/50285251)。世界の都市部は大丈夫だろうか。

もし微量の粒子系の有害な物質を避けようと思ったら、この世界ではかなり困難だと思われるが、この文章では逃げるなと言っているのではない。どこで暮らそうと人の自由だと思う。単に、正確に知っておくことで、もし将来の日本において、落ち着いて妥当な受忍限度の範囲を自分で決められれば、無用な移動リスクを避けることも選べるのかもしれない。

最近では気候変動の影響がニュースになることが非常に増えた。もしかしたら人々のなかで一部は以下のニュースに出てくる人々のように「環境不安」というメンタルヘルス上の不安感を覚えているかもしれない。欧米で増加している。

「悲しくて、悲しくて、立ち上がれない。これほどまでに悲しくなるなんてー」ジュディ・クレイマーさんは、「環境不安」と呼ばれるメンタルヘルス上の問題を抱えている。(略)「私は希望を感じない。地球の気候に不安と悲しみを感じる」精神分析医のエリザベス・アルレッド氏は「これは大きな問題だ。個人で回避しようと思って、回避できる恐怖ではないからだ。またその怒りをどこにぶつけていいのかもわからない。原因となる問題がいまだに正しく対処されていないのだ」と話す。他に、問題の共通認識を得られないことで孤独を感じるなどの当事者からの意見があるようだ。専門家によると、行動に出ることが不安に対処する1つの方法だという。(気候変動がメンタルヘルスに影響、欧米で広がる「環境不安」ロイター 2019年10月24日 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191024-00010008-reutv-int

自分だけのちからではどうにも解決にまで進めない問題に対処しようと精神的に負担しすぎたり怖く成り過ぎたりして、環境不安に陥り、悲しくなり、日々を過ごし、理解されているともあまり感じられず、孤独を感じる。けっこうな数で同様のことを感じているひとをSNSで見つけられそうな予感が働く。「SNSでの煽(あお)り過ぎ」も問題に数えられるだろう。

あの頃のことについて特に一般の人達の選択はどれについても後で勝手に裁くなど無いほうが良いと思う。いっぽう、あのころネットでの一部世論を強く煽っていた方向性は、2つあった。それは「福島から人や物を出すな」と「福島から出ろ」であった。それらが真逆の方向性をもって人々の辛い悩みを無理に引っ張り合い、分断したこともあったかもしれないと想像する。

なんでもひとは自由に言論していて良いのだろうけれど、発信したり表現したりするほうは、あまり過激で無配慮に続けないほうがやさしい。その画面一枚の向こうで人々は治療が必要なほどに泣いているかもしれない。あおりすぎるのをやめて、みずから着実に行動を起こし、その成果をSNSにアップロードして、希望を煽るようにしてみてはどうだろう

「希望を煽る」
まるでメーヴェ乗りのように飛べそうだぞ。


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吉田 邦吉

吉田 邦吉 について

CHIEF EDITOR ▼Yoshida Kuniyoshi / 1981年1月大熊町生まれの原発避難者。中大法卒、2000年より塾長。2013年4月、赤坂憲雄の活動のもと文の道へ、2014年9月22日に卒業同日、「WELTGEIST FUKUSHIMA」で独立し出版事業を開始。エッセイで致知出版大坪社長特別賞。2017年度にアメリカ横断距離5000kmを歩き、1500kmの時点で20kg痩せ、2017年にアルコール、2018年にパイプを止める。会津民俗学研究会員。書籍編集長。雑誌共同執筆。文化庁支援事業や福島県立博物館や横浜美術館ヨコハマトリエンナーレ(オラファー・エリアソン作品)などで講師やトーク等々。私設図書館「ふくしま本の森」にて活動等。新聞、ラジオ、テレビ、インターネット、多数回のメディア出演を経験する。NHK BS1 スペシャルNHK world premium「福島タイムラプス」(出演)は全日本テレビ番組製作社連盟ATP賞テレビグランプリ優秀賞、ニューヨークでも受賞。2019年から日々20kmのジョギング継続。法学、哲学、民俗学、そして20言語の学習も続けている。同年夏から農業関係の区域内公共事業に就く。県内在住。facebook / website / Amazon/ Twitter/ Instagram▼ Essayist. Private school. Nuclear evacuee 2011-. Independent publisher. Majored in law, Chuo Uni, related to the Middle Temple in London. A special essay prize on a first-class magazine 2015. Lectures and Talks at Fukushima prefectural Museum, Yokohama Municipalcity Museum of Art as Yokohama Toriennale 2017 with works by Olafur Eliasson etc. Like learning languages, Folklore, etc. So many Appearances of Newspapers, Radio, TV, Internet, and NHK BS1 SPECIAL and NHK world premium (Fukushima TImelapse, ATP award TV grand prix, outstanding performance award 2018 in Japan. Also, in New York it received an award). Jog 20 km and study 20 languages everyday and agricultural public enterprise worker since 2019. Live in Fukushima.