書の海を漂う~乱読日記*その三  「フクシマ発」   伊藤千惠

fukushima「フクシマ発」 ―イノシシ五万頭、廃炉は遠く・・・・人々はいかに這いあがるか 現代書館 2015.10.15発行

東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、福島関連本はいったい何冊刊行されたのか見当もつかない冊数である。私も数冊、ベクトルの違う本を持っているが、年月が経つにつれ書店に設けられたコーナーを見かけなくなってきた。
そんななかでの一冊。このヴェルトガイスト・フクシマの吉田邦吉編集長が昨年、会津史の第一人者、星亮一氏から編集を託され、著名人から市井の人まで多様な声で編まれている。

吉田邦吉氏は大熊町からの避難者でもある。
家も生業もそこで暮らした時間も将来さえも、すべて事故により喪失させられたことを我々は想像でしかとらえることができない。
私の九州の友人は、テレビで放映された補償金で高級車を購入した避難者の話を、何かしら多くの人のことのように誤解していた。メディアはセンセーショナルに一部をとりあげるだけで、多くの人が受けた忍苦は伝わっていない。
私はこの本にある避難者のなまの声を彼女に知ってもらいたい。

もちろん、福島における事故の影響は様々である。
生産の現場から地域の復興をめざす人たちの声、支援者として関わっている人たちの声もある。
それぞれの福島を、誰かが総括したり代弁するのではなく、自分のことばで語っているこの本を多くの人に読んでもらいたいと思う。